戯作

ちんせつゆみはりづき

『椿説弓張月』

曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』と並ぶ代表作。物語は弓の名人源為朝を主人公とし、日本と琉球を舞台として縦横無尽の活躍をさせた伝奇性あふれる英雄譚で、以後の史伝物の型を作り、長編読本の醍醐味を伝えた記念碑的な作品。挿絵は葛飾北斎が担当し、戯作者と画師の力が充分に発揮された傑作といえる。画像は弓の名人為朝像の口絵。なお国芳の浮世絵「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」は、本作の琉球渡航時のエピソードを描いたものである。

読本。曲亭馬琴作。葛飾北斎画。平林庄五郎板。
全二十八巻二十八冊(前編、後編、続編、拾遺、残編)。文化四年(1807)~文化八年(1811)刊。

むかしがたりいなづまひょうし

『昔話稲妻表紙』

山東京伝の、『桜姫全伝曙草子』と並ぶ読本代表作。「鞘当」や「草履打」といった芝居の見せ場を巧みに物語中に取り込み、白拍子藤波の怨念から蛇に体を巻き付かれて蛇娘として見世物に出る孝行娘楓の姿など、猟奇的ながら絵画美に溢れる多くの場を持ち、浮世絵師北尾政演としても活躍した京伝独自の読本の魅力を伝える。後編は文化六年(1809)に『本朝酔菩提』として出された。

読本。山東京伝作。歌川豊国画。伊賀屋勘右衛門板。五巻六冊。文化三年(1806)刊。

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はやがわりむねのからくり

『早替胸機関』

式亭三馬の滑稽本で、丁稚やおかみさまのせりふによる人物描写は、話し言葉への強い興味を持つ三馬ならではのもの。しかし本書はそれのみならず仕掛絵本の趣向が凝らされており、紙面を畳むことにより新たな画像が現れるという造本の遊び心にも溢れ、同時期に売り出された『浮世風呂』二編と共に人気作となった。

滑稽本。式亭三馬作。歌川豊国画。西村源六板。一冊。文化七年(1810)刊。



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にせむらさきいなかげんじ

『偐紫田舎源氏』

柳亭種彦の代表作であり、草双紙第一の人気作で一万部以上が刊行されたという。物語内容は『源氏物語』の翻案作で、舞台を室町期に変え、主人公足利光氏を巡る御家騒動となっているが、当代将軍家斉の大奥に通じるとの巷説もあり、女性読者の絶大な人気を集めた。天保改革にあって絶版となり物語は三十八編までで中絶、作者の種彦も渦中に病没した。

合巻(草双紙)。柳亭種彦作。歌川国貞画。鶴屋喜右衛門板。全三十八編。文政十二年(1829) ~天保十三年(1842)刊。

しらぬいものがたり

『白縫譚』

幕末から明治期に掛けて出された長編合巻の代表作。蜘蛛の妖術を操るヒロイン若菜姫を中心に、天草の乱を採り入れた波瀾万丈の伝奇小説で、合巻の最長編作として知られる。作者も数名によって書き継がれ、それに連れて多くの画師が関わり、版元も代わる中で三十五年以上に亘って刊行されたが、最終部分は稿本のみが残る。

合巻(草双紙)。柳下亭種員(初~三十八)、二代柳亭種彦(笠亭仙果)(三十九~六十五)、柳水亭種清(六十六~九十)作。三代歌川豊国(国貞)、二代歌川国貞、歌川芳幾画。藤岡屋慶治郎、広岡屋幸助、丸屋鉄次郎板。全九十編、うち七十一編まで刊行。嘉永二年(1849)~明治十八年(1885)刊。

だいしがわらなでしこばなし

『大師河原撫子話』

曲亭馬琴作の黄表紙。悪人に父を殺された上、その悪計により夫とも別れるが、幼な子と苦難の生活の果てに川崎大師の霊験によって敵を討ち、幸せを手にするお露の物語。好評で、後に板元と画師を変えた改刻版(合巻)が出されている。元版と改刻版の双方を展示する。また、元版の活字翻刻を会場で希望者に配付(300部限定)予定。

(元版)黄表紙(草双紙)。曲亭馬琴作。酔放逸人(北尾重政)画。蔦屋重三郎板。六巻六冊、文化三年(1806)刊。
(改刻版)合巻(草双紙)。曲亭馬琴作。歌川国貞画。蔦屋吉蔵板。六巻三冊、天保十二年(1841)刊。

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